いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

初めての人力車

「嵐山に行こう」

 

眠っていた妻を抱き起こしながら耳元でそう呟いた。朝起きてカーテンをめくり気持ちの良い快晴が目に入ったとき、そのように思い立ったのだ。

 

朝食と身支度をすませると阪急電車に乗った。電車でお出かけは久しぶりだったが、1時間で嵐山に着くので、よい立地に住んでるなと嬉しくなった。

 

まだ紅葉シーズンではないので来訪者も疎らだった。狙い通り。紅葉がなくても私にとっては充分魅力的な場所なので、やはり時期を外すに限る。

 

川沿いをぶらぶら歩き、カフェオレを飲んだ後、りらっくま茶房という店で昼食をとった。店頭のメニューを見ただけで妻と娘が心ときめかせたからだ。

 

店内に入り改めてメニュー表を開くと、男の私でもその可愛さに圧倒された。正直味は普通だったが、娘は「めちゃめちゃおいしい」と珍しくバクバク食べていた。すっかりりらっくまの虜となったふたりは食後1Fのショップで色々とグッズを買っていた。

 

ふたたび河原を歩き、娘と石投げをして遊んだ。通り過ぎる人力車を眺めて娘が乗りたいと言った。私も思えば乗ったことがなかったので、人力車に初乗車してみることにした。

 

値段を聞くと、子供たちが小学生になるまでは無料で4人一緒に乗れるらしい。30分コース9000円を選び、王道の竹林を通るコースでお願いした。

 

乗車の際こわくて泣いていた息子も走り出すと、声を上げて笑い始めた。娘も徐々に緊張が溶けていき、引き手のお兄さんと愉快に会話を始めた。

 

人力車の少し高い視点で走る嵐山は気持ちよかった。通りすぎる人たちからの羨望の眼差しも心地よく、なにより頬を撫でる風が心を沸き立てた。

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竹林エリアでは人力車しか通れないルートを通り、ベストポジションで家族写真を撮ってもらった。年賀状で使えるレベルと豪語していただけあって、小技の効いた写真の出来上がりは素晴らしかった。

 

徒歩では通ったことがなかった小径もいろいろと通ってくれて、より嵐山の地理を知ることができた。最後は渡月橋のまえでふたたび写真撮影。大満足のうちに30分の旅が終了した。

 

贅沢なので毎回とは言わないが、4人で乗れるのは娘が小学生になるまでなので、それまでにもう一度は乗りたいなと思った。

 

以前ここを訪れたときもそうだったが、嵐山には心が荒み気味のときに行きたくなる。そして帰るときにはそのささくれがずいぶんと収まっているのだ。

 

よい秋分の日だった。やはり私にとって大切な地。