いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

森の宝石

どんぐりを並べて地面に文字を描く。

 

我ながら可愛らしい遊びをしたものだ。しかし実際にやってみるととても楽しかった。撮った写真は趣で溢れているし、なにより季節感を堪能できる。

 

質の良い、ぷってりとしたどんぐりが大量に落ちていたので何気なくやり始めたのだが、最終的には妻と娘さんにんで夢中になって創作にいそしんだ。

 

どんぐりで娘と息子の名前を描いてみた。文字にはどんぐり特有の丸みと温かみが帯びて、たまらなく愛らしいフォントになったと思う。

 

娘はしゃがみこみ、割れていない上質などんぐりの採集に夢中になっていた。図鑑でどんぐりの中に卵を産む虫がいることを知って以来、注意深く選定することを覚えたのだ。妻は赤みがかった落ち葉でデコレーションを施し、色味を添えることで写真をいっそう映えるものに仕上げていた。

 

途中から私は眠った息子を抱いて、石垣に腰掛け、その様子を穏やかに眺めていた。久々に訪れた隣町の公園は今日も穏やかで、そよ風が揺らす木々の葉が、秋のメロディを奏でるのにそっと身を委ねた。

 

興が乗った妻は、落ち葉に穴のあけ顔を描き、葉っぱのお面を作った。さっそく娘も真似をしはじめ、不器用ながらもなんとか顔を完成させた。

 

出来上がった顔がなんだか泣き顔に見えたのか、娘はその表情を模して、並んで写真を撮っていた。

 

やっぱり秋はいいな。おろしたての妻の秋服も素敵だったし、息子に履かせた赤い靴も景色に溶け込みよく映えていた。どんぐりを見つけたときのささやかな幸福感も良い。他の親子連れも見つけた際に声を出しているのをたびたび耳にした。テカテカと深みのある光沢を放ち、まるで森の宝石みたいだ。

 

秋は深まるばかり。これからもどんぐりにはお世話になるだろう。次はもっとたくさんのどんぐりを集め、今日は完成できなかった長文も完成させよう。