いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

跳び箱

一日中着ていたパジャマが少し匂う。

 

胸元の隙間に鼻先をつけたことで、そのことに気付かされた。私はダンゴムシのように身体を丸めていた。できるだけ小さく、身体を縮こませるのだ。

 

「いくよ!」

 

娘が向こうから駆けてくる。私はさらに身体をひきしめた。私の背中に両手をつき、娘が私の身体を跳び越える。今度は着地も申し分ない。成功である。

 

「どうだった?」

「完璧!お尻もついてなかった」

「やった!」

 

私が台になり、跳び箱の練習をしているのである。マット代わりに布団を敷き、その上で身体を丸めている。幼稚園の体操のときにはできなかったようだが、次の機会には跳べそうである。

 

「もういっかいやるー!」

 

娘は出来るようになると楽しくなって何度も繰り返す。そうするともっともっと上達する。多くの人がそうではないだろうか。だからこそ、成功体験は大事である。娘を見ていて改めて思う。

 

私も久しぶりに跳び箱を飛んでみたくなった。今なら何段飛べるのだろうか。若かりし頃のように前転や片手跳びはできるのだろうか。たぶん無理かな。