いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

傲慢と善良

辻村深月の『傲慢と善良』を読了した。

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図書館から本の確保ができたと通知が来たので借りに行った。予約したのは何ヶ月も前だ。はて、私はなぜこの本を予約したんだっけ?読み始める前は正直そんなことを思ってしまった。

 

本に疎い妻でさえ知っている話題作だということは理解できたのだが、それでも予約までした理由が思い出さなかった。そのためあまり気乗りせずに読み始めたのだが、読みやすい文章と、サスペンス要素もある構成のおかげで、すぐに物語に入り込むことができた。

 

そして中盤に至る前あたりのところで、自分がなぜこの本を読みたいと思ったのかを思い出した。この本が、私も好きな名作恋愛小説『高慢と偏見』に着想を得て書かれた本だということを知り、興味を惹かれたのだった。

 

実際に物語の中でもその作品の名前がでてくる。そしてそれを現代の恋愛にあてはめると『傲慢と善良』になるとのことであった。なるほど、面白い。そこからさらにこの本にのめり込み、読み進めていった。

 

婚約者が突然失踪した。そんなサスペンス要素が物語を牽引するのだが、読み応えがあるのは実は端々で言語化されていく、現代の恋愛における"生きづらさ"のようなものだ。

 

婚活アプリやSNSに纏わるドロドロとした厭らしさ。女性同士の容赦ない詮索と執拗な口撃。自分の娘も将来こんな世界で生き抜いていかないといけないのかと思うと、思わず不安を抱いてしまった。

 

それでも様々あるこのような障害を乗り越えてこそ、結婚するに相応しいふたりの絆というものが築かれるのかもしれない。私も結婚に至るまでそこまで苦労した思いはなかったのだが、冷静に振り返ってみると、なかなか色々な障害があったことに気づかされた。

 

当初はそんなこと屁とも思っていなかったのだが、それくらいの強い信念がなければ結婚できなかったというのも、この本を読んで改めてリアルに感じられたのだった。

 

なるほど。話題になるのも理解できる良書であった。今後も気になった話題作は図書館で予約して読んでみよう。忘れた頃に読むのもまた一興であったから。