いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

アホウドリの迷信

柴田元幸岸本佐知子の『アホウドリの迷信』読了。
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好きな訳者ふたりのアンソロジーだったので発売当時から気にはなっていたのだが、その頃は図書館で本を大量に借りて読み漁るというモードに入っていたので、読むまでにこんなに間が空いてしまった。

 

テレビで本書が紹介されていたことで思いだし、調べるとやはり評判が良さそうだったので、久しぶりに取り寄せで購入して読んだ。日本ではまだ紹介されたことのない作家の“掘り出し物”作品のみ、という縛りだけで人気訳者ふたりが作品を好きに選んだコレクションだ。

 

訳者というだけではなく、読み手としても信頼を寄せているふたりが選んだ8篇は、やはりどれも面白く読めた。久々に海外文学の静謐な、というか、落ち着きのある奥ゆかしいテイストの文章に触れ、ああ、自分が好きな読書とはこのようなものであった、と再確認させられることとなった。

 

また図書館の本ではなく、自分で買った真新しい本のページを丁寧に捲り、じっくりと読むという感触の良さも改めて実感した。借りた本も、なにも乱暴に読んでいるわけではないのだが、身銭を削って読む読書は、そうでない読書のときと比べて、やはり幾分か血肉になりやすいのではないだろうか。

 

良い小説を読むと、似たようなテイストの小説を続けざまに読みたくなる。ゆえに本書を読み終わる前から、次に読む作品をAmazonで早くも探し始めていたのだが、タイミングよく柴田さんの文学誌『Monkey』の新刊の発売日が近く、それも興味を惹かれる内容だったので、予約して待つことにした。

 

まだ到着までは数日間あるが、心待ちにしておきたいと思う。またしばらく海外文学を読み耽る日々が始まりそうな予感がしている。実に喜ばしいことである。