いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

月の満ち欠け

佐藤正午の『月の満ち欠け』を読了した。

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直木賞をとり、映画化も話題となっていたので、気にはなっていた作品だ。もっといえば、出版された当時から、“岩波文庫的”な表紙が機知に富んでいて目を引かれていた。

 

とはいえ自分で購入するまでは惹かれず、図書館で予約をし、長い順番待ちの末、先日やっと借りることができた。あらすじは読んでいるし、映画の宣伝も目にしていた。ゆえに前世や転生といったファンタジー要素があることは知っていたが、そのテーマでどのように物語を展開させるのかに興味を持っていた。

 

その期待に後押しされ、とにかく勢いよく読み進めた。文学小説ではないのですいすい文章は読めた。ミステリアスな冒頭から引き込まれ、結末が気になるゆえにページがどんどんとめくられる。ただ、最後まで読み通して得た感想としては、あらすじを読んでおよそ想像していたそのままのストーリーであり、それ以上でも以下でもなかったことに、半ば拍子抜けをしてしまった、という感じである。

 

もちろん面白く、これを豪華キャストで映画化すれば、なるほど涙を誘う感動作になるだろうなと、容易に想像もできたのだが、いかんせん直木賞もとるくらいで、多くの人から絶賛されている物語なので、最後には大きなどんでん返しや、ネタ明かしがあるのだろうと、鼻息を荒くし過ぎていた。ようは勝手に期待しすぎていたのである。

 

普通に楽しく読めはしたのだが、やはりどこか深みというか、物足りなさを感じてしまったのは正直なところだ。やっぱり大衆エンタメと自分の好みとの間には、大きな隔たりができているのかもしれない。おとなしく、ニッチでオタクな文学小説でも読んで、つつましく楽しんでいるのが得策なのかもしれない。

 

とはいえ、妻は目黒連を推しているし、私も大泉洋有村架純のことは好きなので、いつか映画は妻と一緒に観賞したいなとは思っている。SF要素がありつつも、とてもベタな純愛物語なので、こんなことを描いておきながら、実際映画を観たら泣くんだろうな。