いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

娘の歯が抜けた日

娘の歯が抜けた。

 

彼女にとってら初めてのことだ。長らくぐらぐらした歯を触っては、落ち着かない日々を過ごしていた。今日は運動会の振替休日で娘が家にいたのだが、午前中、ふいに娘が声をあげ、歯が抜けたことが仕事部屋にまで聞こえてきた。

 

娘は当初小さなパニックに襲われていたが、鏡を覗き、出血が思ったほどでもないとわかると落ち着きを見せ、あまり実感が湧かないのか、どこか不思議そうな表情を浮かべていた。

 

数日前から、ほぼ取れかけていたので痛みもなかったのだろう。本人としてもいつもの調子で軽く触っていたら、急にとれたので手応えがなかったというのが本音だろう。それでも、初めて抜けた歯を手のひらでコロコロと転がしてみては、少しずつではあるが、自分の身におきた出来事を噛みしめているようであった。

 

その後の娘は、歯が抜けたことで食事もとりやすくなり、ストレスの原因が取り除かれ、晴れ晴れとした様子であった。それこそ、一皮むけたような気持ちだったのだろう。ひとつ大人に近づいたのは事実である。

 

昼食後、そんな娘を連れて図書館へと出掛けた。

 

彼女が家の中で少し手持ち無沙汰になっていたからだ。図書館につくと私は予約本を受け取り、娘と一緒に彼女の本を探した。結局、いろいろな本に興味をもち、彼女のだけで6冊もの本を借りることとなった。

 

自転車での帰り道も、彼女は終始ご機嫌で、私に向かって話しかけてきた。思えば、会話の内容も少しずつではあるが、大人同士のそれに近づいてきたような気がする。いつまで後ろに娘を乗せて自転車を漕げるだろう。その日は間違いなく近くまで迫ってきている。