カズオイシグロの講演を書き起こした『特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレークスルー』を読了。
この前まで、イシグロ作品についての書評やガイド本を読んでいたので、イシグロ自身の文章に触れたくなったのだ。この本は講演の書き起こしだが、彼が下書きした原稿を読み上げたに違いないだろう。
読了後の感想としては、やっぱりイシグロの視点は深くて興味深いな、というものだった。さらには自身の作品における背景や創作における狙いについても詳らかに語っており、そこがとても好感をもった。
自身の作品について種明かし的なことを避ける作家が多い中で、なかなか太っ腹だなと思った。創作の裏側を語ったとしても、アウトプットである作品の強度は揺るがない、といった自信や矜持からくるものかもしれない。それはとても素晴らしいことだと思う。
実際、この本を読みながら、並行してイシグロ作品を第一作から読み返す、といった営みもはじめたのだが、改めて、イシグロ作品の完成度の高さに驚かされることとなった。
引き続き、最新作までを順を追って読み返したい。