いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

カズオ・イシグロ文学白熱教室

昼休憩時に表題のDVDを鑑賞した。

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先日たまたま図書館で見つけて借りたものだ。面白くなかったら途中で切り上げようとも思っていたのだが、イシグロの話が面白く、結局(少し休憩時間を延長する形で)最後まで見通してしまった。

 

同じく世界的な作家である村上春樹と違い、ロジカルに自身の文学作品を捉え、しっかりとしたテーマ選定と構想をもって作品に取り組まれていることが興味深かった。作家にも色々なスタイルがあるものだ。

 

加えて、自身の作品についての狙いやそれを書いた背景についても、詳らかに解説し、明瞭な表現でもって言語化してくれている点も、好感を抱いた。作者の口からそのような解説をしてくれたことにより、作品に対する理解も深まり、また読み返したいという強い感情に駆られた。

 

また批評家などからもよく言われている、イシグロ作品の共通テーマである「記憶」や、得意手法である「信頼できない語り手」についての言及もあり、本人としてもまさにそこに関心を持っており、意識的に用いていることも語られていた。

 

またフィクションを作る・読むことの意義、その中でも小説だからこそできる表現方法、そういったことにも思考を巡らせ、自身の作品に狙いを持って反映させていることも窺い知ることができた。

 

イシグロは感覚的なアーティストではなく、ロジカルな学術的なアプローチで、小説を書いているような印象を受けた。前者についてはまったく素養のない私としては、後者の方がまだ理解ができる。ゆえに共感を得ながら、彼の話を聞き続けることができた。

 

改めて偉大な、大好きな作家であるなと再確認。改めて、彼の作品を全部読み返したい気持ちになった。