タオルに包まれた娘が浴室からでてくる。
家族3人でお風呂に入った際、まずは私が先に出て身体を拭いて服を着る。その後、妻が暖かい浴室の中で娘の身体を拭いたのち、彼女を脱衣所へとだすのだ。
私は娘の身体を支えながらおむつを履かせる。最近の娘は、そのタイミングで『おへそ探し』をはじめる。
履かされているおむつに目が向くことで、お腹にある自分のおへそが目に入り、それがきっかけとなるのだ。
娘は私の服をまさぐり「ないねぇ」と呟きながら私のおへそを探しはじめる。まずは首元の隙間を覗き込み「ないねぇ」。次はお腹の服をまくし上げ「ないねぇ」。その状態でズボンを少し下げると、やっと私のおへそがでてくる。(腹巻きと一体型のズボンなのだ)
「あったぁ!いっしょ、いっしょ!」
私のおへそを見つけた娘は、自分のおへそと交互に指さし、にんまりと笑う。“おへそ”を通じて親子のつながりを見いだすなんて、なかなか人間の真理をついているではないか、と少し感心してしまった。
まぁ、私とへその緒で繋がっていたわけじゃないけど。
さて、そんな風におへその事を考えていたら、おへそを取っちゃう雷様を連想し、そこから鬼にまでイメージが繋がった。あ、そういえば旅行に行っていたので、今年は豆まきをしてないじゃないか、と気がつく。
しまったな、と思いつつも、でもまぁいっか、と思う私がいた。というのも、昨夜も寝るときにこんな会話を娘としたばかりなのだ。
「早く寝ないと鬼さん来るよ」
「だめぇ、ねんねするー」
娘が怖がっているうちは、鬼にはもう少しだけ家に居てもらわないとね。1匹くらいは、鬼は内。