いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

小説読本

三島由紀夫の『小説読本』を読み終わった。
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文学評論の趣を帯びたエッセイ集だ。自らの制作手法を赤裸々に明かしつつ、文学への尽きない追求心をつまびやかに書き記している。

 

三島ほどの偉大なる作家が、これほどまでに探究し続けているという事実には、文章を書く者のひとりとして感銘を受けさせられた。そういった意味では、作家志望の人達にとっての小説指南書とも言えるだろう。

 

相変わらず知性に満ちた文体で書かれている。たまに筆が走りすぎて、読者を置いてけぼりにしてしまうほどの高度な論理展開を見せる。そんなところも含め、「文章に圧倒される」という希有な陶酔感を味わえるというのが、やはり三島文学を読む上での魅力だ。

 

小説という形態は「自由」であり、どのようにでも書くことができる。だからこそ、どのような小説は「書かないか」、そこに強い信念を持っていることが伝わってきた。「真の小説」なんてものは人それぞれ、だとしても、己の信念に基づき、日々鍛錬を重ねているのだ。

 

それにしても、三島は本当に多くの文学作品を読んでいる。そして、それらに対する分析と理解は底が知れない。またその鋭い審美眼は、自身の作品へも向けられており、自らの文体の作品毎の変遷についても本著では語られている。実に興味深い内容だった。

 

この本を読んで、三島由紀夫への興味が深まった。次は初となる小説作品を読もうとしており、既にページを捲り始めている。引き続き、三島作品を読み漁りたい。