いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

金閣寺

三島由紀夫の『金閣寺』を読了した。
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日本文学における金字塔とまで言われている作品だが、恥ずかしながら初めて読んだ。その荘厳な空気に圧倒されながら、堪能する喜びを噛みしめつつ読み進めた。

 

ここまで細緻で知的な文章というのは初めて読んだ気がする。これくらいの文章が書けなければ文学作品は生み出せない、もしもそう言われるのであれば、私は一生かけても文学の領域に指をかけることもできないだろう。

 

主人公の語りをとおして美に関する思想が数多く登場するのだが、それを描く文章自体も耽美的精神に貫かれているように感じた。よくぞまあ、知的で堅い言葉達を使って、ここまで美を感じさせる文章が書けるものだ。

 

三島の文学的な才能に疑う余地はなく、これを若干三十一歳で書いたと知り、私は畏怖の念を抱いた。この重厚な作品の全てを理解できたとは口が裂けても言えないのだが、それでも、作者の末恐ろしさについてだけは、十二分に感じ取ることができた。

 

また、構成美に拘る三島らしく、この作品の展開にも一切の無駄のなさを感じた。すべての登場人物たちとエピソードには意味があり、それが主人公に影響を与えていくことで、最後の事件へと確実に収斂していく。

 

確かに文学小説のお手本となるような作品だなと思わされた。現代の人からすると、馴染みの浅い単語や表現も数多く登場するのだが、それでも淀みなく最後まで読ませてしまうのは、ひとえに三島の文章の力だろう。

 

凄いとしか言いようがない作品だ。好きだとか、面白いとかではなく、ただただ圧倒されてしまった。気軽に読み返せる代物では無いが、いつかまた、文学への理解がより進んだときに、ふたたび読み返してみようと思う。