いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

泳ぐのに、安全でも適切でもありません

江國香織の『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』を読了した。
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ふと女性作家の小説が読みたくなるときがある。以前ではあまりなかったことだ。歳をとるにつれて、女性作家の文章の味わい方というものがわかってきた。きっと結婚して女性がもつ感性の素晴らしさに気づかされたからであろう。

 

本屋で目にとまり、すぐに手に取った。まずタイトルが良い。どんな物語なのかと想像が膨らむ。最近蔓延る、無駄に冗長な、奇をてらうためだけにつけられたタイトルとは一線を画す。

 

愛にだけは躊躇わない女性たちの話を集めた、10篇からなる短編集だ。ひとつひとつの話はとても短い。しかしそのどれもが味わい深い。私も信頼を寄せる山本周五郎賞も受賞している。

 

良い文学小説を読むと、自分でも文章が書きたくなる。この作品もそうであった。ささやかな日常の中に存在する、きらきらとした欠片たち。それを丁寧にすくい上げ、忘れないよう文章にしたためたい、そんな気持ちになるのだ。

 

そんなとき、このように日々日記をつけていることを嬉しく思うのであった。アウトプットに影響を与えてくれるインプットというものは、いつだって貴重で、有り難い存在である。

 

江國の作品は学生時代に二三読んだ以来だったが、今の方が、その大人向けの文章がすんなりと身体に馴染んだ。また女性作家が読みたくなったときには、彼女の作品も候補に入れよう。