いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

英語を勉強する宣言

ふいに英語を習得したいという気持ちが芽生えた。

 

きっかけは色々とあるのだが、一言でいえば「せめて英語くらい人並み程度にできなくてどうする」と、我ながらに思ってしまったからだ。

 

善は急げと、私は会社帰りに本屋へと立ち寄り、英語学習の書籍を購入した。とりあえず、TOEICで600点をめざす。それを今年度の目標に掲げることにした。

 

私はご存じのとおり、日本語をこよなく愛する男だ。彼女とは常に誠実に向き合い、ときに思いっきり戯れ、揺るぎない蜜月の日々を積み重ねてきた。

 

そんな私が英語にうつつを抜かす日がくるなんて。きっと彼女は失望し、枕を濡らしていることだろう。

 

結局あなたも他の人たちと同じよ。日本語は言う。私なんかじゃ物足りなくて、広い世界が見たくなったんでしょ?確かにあの娘は世界一だわ。誰しも一度は彼女を我がものにしようと、躍起になって追いかけるんだもの。

 

違うよ、と私は日本語に弁明する。別に英語に浮気したわけではないんだ。仕事のため、あくまでビジネスライクな関係を築くだけだよ。

 

私は信じないわ。日本語は言う。そんな使い古された言い訳で納得できるわけがないじゃない。それに「ビジネスライク」だなんて、ほら、もう英語に染まってしまっているじゃないの。

 

そんなことない。「ビジネスライク」なんてもはや和製英語じゃないか。「事務的」って言い換えれば満足なのかい?そんな野暮ったい表現を、こんな会話の中で使わせないでおくれよ。

 

野暮ったいだなんて、ひどい。

 

言葉が過ぎた。悪かったよ。私は君を使って話していると、ついつい筆が走りすぎてしまうんだ。ほら、もうこの文章は着地点すら見失っているよ。どうしてくれるんだい。まったく、ほんとうに君はいつだって僕を狂わせてしまうんだから。

 

そんなんだから・・・英語の方がいいんでしょ?

 

そんなわけないだろう。もしそうだったら、なんで君を使ってこんなにも長い文章を書くって言うんだい。こんなに意味も内容もない、丸っきり無駄な文章をだよ?

 

私を書くのが・・・好きってこと?

 

そういっているじゃないか。ずっと私はそう言っている。ほら、振り返って見てごらん、私が書いたものには君ばかりが溢れかえっているだろう。

 

・・・嬉しい。もっと、もっと書いてほしい。

 

書くよ。言われなくても書く。明日も明後日も、その次の日も。私の手が動かなくなるその日まで。君を使って文章を書き続けていく。そう誓うよ。

 

ぜったい・・・約束よ?

 

ああ、約束する。だから、英語の勉強だけは認めてほしい。本当に、将来仕事で必要になってくるんだよ。

 

わかったわ。許してあげる。

 

ありがとう。きっと英語を学ぶことで、またいっそう君の魅力を再確認するに違いないさ。

 

うふふ。じゃあ・・・勉強頑張ってね。

 

ああ、頑張る。必ず人並みくらいには習得してみせる。