いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

オリーヴ・キタリッジの生活

エリザベス・ストラウト著『オリーヴ・キタリッジの生活』を読了した。

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こちらも愛読する読書ブログの紹介で手に取った。『ピュリッツァー賞』を受賞した作品のようだ。

 

流麗な筆致で、瑞々しい表現に溢れる素晴らしい作品であった。何気ない日常をドラマチックに切り取り、内面における激動を鮮やかに描いている。

 

作風もとても私好みであった。平凡な人々の生活を通してそれぞれの物語を魅力的に描くのは、とても手腕のいることではないか。筆者の人生経験も重要になってくるだろう。そういう意味では、作品を通して筆者の人間としての深みも伝わってきた。

 

それぞれに異なる主役が語り手となる短編集。それでもタイトルにもあるオリーヴ・キタリッジが、ときに主役として、ときに脇役や端役として登場し、この一冊の作品に一本の軸を通している。

 

さまざまな視点からオリーヴに触れることで、彼女の多面的な人間性がどんどんと掴めてくる。また、ページを捲るごとに物語の中の時間が経過していくので、最終章ではオリーヴは八十手前の未亡人になっている。その経過を辿っていくと、彼女の変化も感じとることができ、愛おしさを抱くのであった。

 

本当に味わい深い作品だ。続編も出たようなので文庫化されたら手に取ろう。他の作品も評判がいいので、この作家の作品は今後チェックするつもりだ。