いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

歩き方

前を歩くサラリーマンに目が止まった。

 

一歩踏み出す毎に、肩が振子のように左右に揺れるのだ。推進力は前に働いているというのに、左右に力が分散しているのが不思議だなあ、と思った。

 

自分も気づかないだけで、実は誰しもがそんな歩き方をしているのかもと思い、その前を歩く女性に目をやった。しかしその人の肩は左右には揺れていない。やはり目の前の男性特有の歩き方なのだ。

 

その歩き方から、その人はなんとなく楽観的で穏やかな性格であるような印象を受けた。おっちょこちょいだけど憎めない奴、友達になったらきっとそんなふうに感じる人なのではないか。

 

ふと、周りの人にも目を向け観察をしてみると、皆それぞれが微妙に異なる歩き方をしていることに気付いた。背中の角度、手の振り、歩幅、皆が皆同じではない。そしてやはり歩き方からは、ある程度その人の性格が想像できるように思えた。合っているかどうかは、確かめようがないのだけれど。

 

私もきっと、せっかちで意地悪そうな歩き方をしているのだろう。そういえば学生の頃は、サッカーをしていると走り方が兄に似ているとよく言われた。もしかしたら遺伝も関係があるのかもしれない。

 

私達はいかにも長距離走者であるかのように上半身を立て、踵で弾むように走るのだ。実際に長距離走は学年で一位になるほど得意であった。その面影は今やすっかり無くなってしまったのだけど。

 

気づけば、目の前のサラリーマンを見失っていた。駅構内を歩いていると、様々な歩き方の人たちが私の前を足早に通り過ぎていく。皆も早く家に帰りたいのだろうか。うん、そうであるに違いない。

 

心に余裕があるときは視界が広がる。いつもなら目に入らないようなことにも気がつく。わかりやすいバラメーターだ。穏やかな気持ちで待ちに待った週末に突入する。その喜びをしみじみと噛み締める。