いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

やどかり

みなもは しずかに ゆれている。

 

くるぶしまでを海水にひたしながら、サンダルで波打ち際をゆっくりと歩いた。一歩踏みしめるたび足元では貝殻がそろそろとうごく。この砂浜にはヤドカリが多く生息しているようだ。

 

水は透きとおるほどに透明で、オレンジがかった夕陽がさざなむ水面で屈折し、水底の砂面には走る稲妻のような模様が脈打っていた。あたかもクリエイターが躍起になって作りそうな幻想的な映像を、自然界ならばこうもたやすく作り上げてしまう。

 

淡路島にきていた。

 

今日から一泊二日の旅行だ。四月に遊びにきて以来、どこに行きたいかと娘に問うたび「あわじしま」という元気な返答がくるようになっていた。

 

淡路島に泊まりで行くよと伝えたとき、娘は夢みたいといったような、言葉では言い表せない喜びをうっとりとした表情であらわしてくれた。

 

前回も訪れた海鮮食堂で昼食を食べ、改めてその美味しさに舌鼓を打った。県立公園ではこれ以上ない快晴の下、水遊びエリアで娘がしぶきを上げてはしゃいでいた。

 

その後は車で島の反対側に向かう。夕方の浜辺では浅瀬の水に大人たちも足をつけた。生ぬるいがそれでもいくらかは身体が涼まる。私はヤドカリを手に乗せて戯れ、娘たちは貝殻を拾って歩いていた。

 

陽が沈みきるまえにホテルへと向かう。今夜は私たちも“宿借り”なのだ。案内された部屋は海辺に面しており、そこからの眺望には思わずうっとりとさせられた。眼下には明日遊びに行く公園も見える。

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今晩は私たちにとっても開会式。ブュッフェを食べたらホテルで優雅な時間を過ごし、明日も元気いっぱいに遊びまわれるよう、素敵な夜を過ごしたい。