いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

一周回ってハイになったヤツ

条件は揃っていた。私と妻は期待に胸を膨らませていた。

 

条件というのは娘が早く寝る条件だ。昼寝も短く、思いっきり遊び、たくさんご飯も食べた。

 

しかも金曜の夜。これは娘を寝かしつけた後、妻とふたりでドラマを1、2本続けて見るような贅沢もできるかもしれない。昨夜の私はそんなことを考えていた。

 

夕食を食べさせたあたりから、娘はすでに眠たそうな様子を見せていた。そのため私たちは急いでお風呂に入った。

 

案の定、身体を洗い終わった頃にはひとりで立たせるのも心配なくらい、娘は今にも寝そうな状態になっていた。

 

お風呂からあがると急いで服を着せ、髪を乾かし、お茶を飲ませた。あれ?と思ったのは、そのときくらいからだった。

 

「おると」

 

娘は「ヨーグルト」を食べたいと主張した。お風呂上がりにおけるいつもの習慣だ。いいんだけど、君、眠たいんじゃなかったっけ?

 

それでも、食べて更に満腹になれば、深い眠りへと誘えるだろう。そう思って、椅子に座らせヨーグルトを食べさせた。彼女はそれをぺろりと平らげた。

 

「ぱん」

 

これもいつものことだ。ヨーグルトの後にはパンを食べたがる。あれ、でも、君、眠たいんじゃなかったっけ?

 

一切れのパンを与えると、彼女は満足げにそれを掴み、頬張った。これ食べたら寝てくれるんだよね?不安の念は募るばかりだった。

 

「あんまんまん!」

 

・・・いや、それは寝るのとは全く関係ない。断固拒否だ。早く歯磨きをして寝かしつけよう。私はそう思た。

 

しかし、アンパンマンをいっこうに見せようとしない私に、娘は非難の叫び声を浴びせた。しょうがない、折衷案で歯磨きをしながら見せることにしよう。

 

そんなこんなで、なんとか歯磨きまでを完了した。これで娘はいつ寝ても大丈夫な状態になったわけだ。

 

娘は広げた布団に、大好きなママと一緒に寝転んだ。こうやっていれば睡魔が襲ってきて、いつのまにか寝てしまうだろう。

 

しかし、娘にはいっこうに睡魔が訪れなかった。

 

その後はご想像の通りだ。娘は何度も立ち上がり、遊びだし、そうと思えば泣き出して、あれよあれよと時間が過ぎていった。

 

私たちも夜更かしの贅沢をあきらめ、消灯し、就寝スタイルに入ったのだが、娘はそれでも寝ることはなく、ひとり活発に動き回っていた。

 

これは完全に「眠気が一周回ってハイになったヤツ」だ。

 

その後、先に睡魔が襲ってきたのは私の方だった。

 

消えゆく意識のなかで、泣きわめく娘を抱っこし必死に寝かしつけようとする妻の姿が見えた。

 

金曜の夜に夫婦水入らずで過ごす夢は、儚くも散ってしまった。

 

おぼろげな光景は徐々に暗闇へと引きずり込まれ、無情にも意識の帳が降ろされた。

 

つまり、私が何を言いたいかというと・・・

 

 

 

奥様、昨夜は大変申し訳ございませんでした。