いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

誕生日の子どもたち

トルーマン・カポーティの短編集『誕生日の子どもたち』を読了した。訳者は村上春樹だ。
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カポーティをしっかり読むのはこれで2作目である。ずっと前に『ティファニーで朝食を』を読んだ以来だ(その後『遠い声遠い部屋』を読んだが途中で挫折した)。

 

久々にカポーティを読んだが、その文体に身体がなじみきる前に読み終えてしまった。6つの短篇が収録されているのだが、どれもその世界に入り込むとすぐに終わってしまい、なかなか読むリズムが掴めなかった。

 

ただ、その「イノセントな文章」とも言うべき美しい語り口には感じ入るものがあり、文章をなぞって読むだけでもカポーティのもつ個性というものを感じられた。

 

解説を読むと、彼はなかなか過酷な幼少時代を過ごしたようだ。それが彼の性格や考え方にも少なからざる影響を与え、うまく大人になりきれず、無垢な精神を抱え込んだままにその人生を歩んだようだ。

 

それを知ってとても得心がいった。とても読みやすい文章なのに、そこから伝わってくる筆者の息づかいに、馴染みのないどこか異質な雰囲気を感じていたからだ。

 

とはいえ、これぞ文学というような美しい表現には感銘を受けたし、力を入れずにさらりと書いたと思われる文章なのに、どれも一定以上のクオリティを備えていて、彼の文章家としての実力は垣間見ることができた。

 

好きな作家のカテゴリには入らなかったが、また別の作品も手に取ってみるかもしれない。今度はじっくりとその世界に浸れるよう、長篇作品を選んで読みたい。