いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

物言わぬ彼

ソファに座り膝を立て、そこに息子を乗せる。

 

両太腿をくっつけてできる溝に、息子はすっぽりとはまる。安定感のあるリクライニングチェアだ。息子はその席を気に入っているようだ。

 

機嫌が良いときには最高の笑顔を見せてくれる。最前列の私は(というか座席そのものになっている私は)遮るものなくそれを鑑賞することができる。瞳に映る自分自身の笑みさえも。

 

彼の瞳は大きい。産まれたての頃はぱっちり二重だったが、今では肉がつき、目を見開くと一重に見える。私と同じで奥二重に分類されそうだ。鼻筋は綺麗で先っぽはツンと上を向いている。これは私とも妻とも違う。今のところ菅田将暉のような格好いい鼻になる素質を感じる。

 

形のよい眉毛は薄く、ひとのよさそうな角度に穏やかに引かれている。髪質はしなやかな直毛で、短髪でも長髪でも映えそうだ。学生時代には少しのワックスでも様になりそうである。

 

ほっぺたはポテンと垂れ、それは日に日に横に拡張しているようだ。彼は毎日吐き出すほどに母乳を飲む。妻の記録によると、生後2ヶ月で既に娘の半年時点の体重を超えているようだ。さすがは男の子。少しだけ頼もしく思える。

 

目を見張るのは二重顎だ。ブラマヨの小杉を彷彿とさせられる。笑うと口が半開きになる。目を細め、ニヤリとニヒルに笑う。キャッキャっと喜声を上げることも増えた。鑑賞者の私には嬉しいことだ。彼はよく掛時計を見て笑う。

 

彼と向き合っていると、彼のことを仔細に書きたくなるのはなんでだろうか。何も言わないおとなしい彼を見られるのは今だけだからかな。

 

物言わぬ彼が、まだ見ぬ将来を雄弁に語ってきてくれるからかもしれない。期待しているぞ。