いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

凧揚げと冒険

そろそろ人間の生活に戻らなければ。

 

私と妻はそのように意を決し、昨日の午後、ついにその重たい腰を持ち上げた。聞くところによれば、世の中には四日から仕事復帰をされたり、更には正月休みすらとられない高貴な方々もおられるらしい。本当に頭の下がる思いだ。

 

どれほどの人徳を積まれればそのような尤なる行動がとれるのだろうか。私などの下賤なる者は、最早でも三日の午後にまでならねば、その腰を持ち上げることすらできないというのに。

 

それどころか昨日妻とは「今年における我々の初動の早さたるや。なんて立派な振る舞いであろうか」と互いに褒め合っていたほどである。

 

さて、そんなわけで昨日は浮世離れしていた両足を地面に据え付けるため、家族で緑地公園を訪れていた。広大なる園内のうち、普段なら行かない家から遠いエリアにまで足を伸ばし、そこで凧を揚げようと考えていたのである。

 

妻と娘は自転車で、私は息子を乗せたベビーカーを押して現地で落ち合った。そこで昼食をとったのち、ついに凧を組み立てる。すみっこぐらしのイラストが描かれた可愛いらしい凧だ。

 

昨日は風も穏やかで、絶好の凧揚げ日和だと思われた。娘の凧はするすると手元を離れ、気持ちの良い快晴の空へと高く舞い上がった。仕事始めが迫る私の憂鬱なる気持ちも、凧と一緒にどこか遠くへと飛んでいくかのようであった。

 

 

 

 

・・・というような綺麗な展開にはならず、凧は思うようには上がらなかった。簡単そうに見えるが凧揚げとはなかなか難しいものである。小一時間ばかり凧と戯れ合うも、その後は諦めて、娘と一緒に公園探索に興じることとした。

 

娘との冒険は楽しかった。私は雰囲気を盛り上げようと、いたるところでそれっぽい演出をした。「あれはなんだ!」「これがここにあるってことは・・・なるほど、そういうことか!」

 

そんな冒険口調は娘にも移り熱を帯びた。街灯が灯る夕暮れ時まで娘と園内を歩き回った。

 

仕事復帰まであと三日。まだまだな状態が続いているが、徐々にでも心を整えていきたい。「そろそろ働かなくちゃマズいだろ」と焦るところまで自分をもっていけたら勝ちかと思う。