いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

刺激をもらえる存在

今日は同期と差し飲みをしてきた。

 

遅ればせながら転職することを告げると、話を聞かせてほしいと夕食に誘われたのだ。もちろん快諾した。彼と会うのはかれこれ1年ぶりくらいかもしれない。

 

律儀な彼は、集合前に転職祝いとしてプレゼントを買ってきてくれていた。ハンカチらしい。気持ちがとても嬉しかった。彼の薦めの店に行き、アクリル板越しにふたり向かいあった。

 

前半は私の転職の経緯から、家族をどう説得したのか等、包み隠さず説明していった。リラックスして少し冗長な説明になっていたかもしれないが、彼は真剣な眼差しで私の話を聞いてくれた。

 

私が会社に対して抱いていた不満の多くは、別の部署にいる彼にも覚えのあるものだったらしい。ゆえに私が転職するに至った要素のいくつかは、彼にも深く刺さったようであった。

 

そんな彼に、転職活動をしてみることを勧めてみたくもなったのだが、彼は今の職場でも成果を出し、しっかりと高い評価ももらっているようであった。だとしたら私とは状況が異なる。また、小さな子供を3人抱えている彼は、現実的にも転職活動をする余裕がないので、今転職することは難しいという結論が出た。

 

彼はその結論が出せたことを喜んでいた。転職のことで長いことモヤモヤに包まれており、私が転職を決めたことでその渦はハリケーン並みに大きくなっていたらしい。それが今日の会食で私と一緒に話を整理したところ、迷いのない結論を導くことができたという。

 

私も彼には会社に残り、出世する姿を見せてほしいなと思っていたのでよかった。また彼の心の整理に貢献できたというのなら、それも嬉しく思った。

 

その後は彼に、今の仕事についてなど色々と話を聞かせてもらった。彼とはいままでお互いに友好的なライバル関係を築いており、ときに競いながらも切磋琢磨をしてきた。しかし話を聞く限り、気づけば彼には大きく差をつけられてしまっていたようである。

 

彼は尊敬する元上司からの言葉で、自身の強みを明確に理解していた。そしてその強みを意識して活用し、日々成長を積み重ねてきていたようだ。要領の良さだけで誤魔化し、これまですり抜けてきた私では相手にならなくて当然だろう。

 

私もその話を聞くまで、彼の強みをうまく言語化できていなかった。彼の強みを一言でいうと『モチベーションを自分で保ち続けられること』であるらしい。

 

それをさらに因数分解すると、『好奇心を持って知らないことを貪欲に吸収する習慣』と『課題に対して達成志向と責任感を持ち取り組む姿勢』が重要になる。言われてみれば、誰もがわかっていながらもそれができない中、彼はそれを確実に実行し続けてきた。

 

結果として彼はどの上司たちからも重宝され、関係者たちからの信頼も厚かった。高評価は当然の結果である。知らないうちに、私と彼との間には大きな溝があけられていたようである。

 

彼なら今の会社のどこの部署に行っても活躍できるに違いないし、仮に転職をしてもすぐに適応できるに違いない。

 

私は大きな刺激をもらい、気が引き締まった。転職をして環境を変えても、彼に似た能力を私も身に付けない限り、またうだつの上がらない状況にもなり得るのだ。環境を変えるだけでなく、自分の意識も変えることが必要だと、改めて気付かされたのであった。

 

彼とのライバル対決はもはや完敗である。そう素直に自覚をしたのだが、帰り道、それでも彼は私から刺激をもらえたと感謝をしてくれた。これからも定期的に交流して切磋琢磨し続けよう、そう言ってくれた彼に、少しばかりの気後れを抱きつつも、私も成長した姿を見せたいなと強く思った。

 

久しぶりに会ったが、やはり刺激をもらえる存在というのは心底ありがたいと思う。これからも歩む道は違えど、引き続き今の良い関係が保てるよう、私も努力と成長を重ね、自信を持って彼と再会を果たしたい。