いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

パパのお仕事

お風呂から上がった娘が仕事机までやってきた。

 

濡れた髪にタオルを当て、端末を叩く私に寄ってきて、話しかけてきた。パパはどんなお仕事をしているの?なるほど、そう言えば毎日働く姿は見せているが、説明したことはなかった。

 

はて、なんと言ったものか。まずはジャブ程度に「困っている人を助けたり、手伝ったりする仕事だよ」と言ってみた。ふむふむ、と聞いてくれたが、まだ疑問点があるようだ。

 

いくつかの質問に、彼女でもわかるような例えも用いながらに答えていく。今度は勤務形態に関する質問が飛んできた。日によって、遅くまで仕事したり、はたまた昼過ぎまで仕事を始めなかったり、子供ながらに不思議に思っていたのだろう。

 

裁量労働制のことをどう説明したらいいか。これまた彼女の世界の例えをだしながら、パパの仕事は勤務時間ではなく、やることだけが決まっているので、成果だけを出していれば、いつ働こうが自由な旨をなんとか伝えた。

 

じゃあささっとやること済ませて、仕事終わればいいじゃん!と言われた。そう思われても仕方ない。なんだか、パパが仕事が遅いと思われてしまったかもしれない。少し失敗したなと感じた。

 

ドライヤーで髪を乾かしてあげながらも、私の仕事に関する興味は尽きないようだった。うまくいっていない会社からの相談に乗って、処方箋を出す、いわば「会社のお医者さん」だという、どこかで耳にした説明も使ってみる。説明をしていて、なんだか我ながら立派な仕事をしているように感じてきた。

 

「じゃあ、もしも、お金を持ってない会社の人が困っていたら、その人をパパは助けてあげるの?」

 

その純粋な問いかけに対しては、しばし答えを窮してしまった。「いや、お金を貰えないと、助けてはあげられないよ」。そうだ、慈善事業じゃないのだ。働きの対価として、高い報酬を徴収する仕事なのである。

 

そっか、そうだよね。という娘は、心なしか声が小さくなったように感じた。立派な仕事どころか、なんだか銭ゲバな商売をしている気持ちになったのだった。