いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

僕の名はアラム

ウィリアム・サローヤン『僕の名はアラム』。

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著者のことは知らなかったが、訳者の柴田氏が勧めるならと、読んでみた。解説を読む限り、私の好きなヘミングウェイスタインベックと同世代に活躍した有名な作家らしい。

 

そんなサローヤンの最高傑作とも名高い本作、結論から言えばものすごく素晴らしかった。

 

少年アラムの牧歌的日常を描いただけの短編集なのだが、なかなかどうして読んでいてとても楽しい気持ちになる。先日読んだ『トム・ソーヤの冒険』と似た作風なのだが、本作の方がより平凡な日常を描いており、私好みであった。

 

文章も素晴らしく、シンプルだが的確な描写は読んでいて心地よかった。当時、人気作家だったというのも頷ける。物語のプロットを計算せずに書くタイプの作家らしいが、その書きかた特有のナチュラルな高揚というものを、読んでいて十二分に楽しむことができた。

 

久々に、出会えてよかったなと思えた作家であった。この本はまたいずれ読み返すだろうし、機会があれば別の作品にも手を出すだろう。

 

海外文学における新しい作家との出会いは、翻訳者を介してなされる場合が多い。これからも信頼のおける訳者にはついて行きたいと思う。

 

また『村上柴田翻訳堂シリーズ』は今のところハズレがないので、別の本もお代わりしよう。