いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

寒灯

西村賢太の『寒灯』を読了した。

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苦役列車の映画を観て以来、心惹かれていた作者である。今年の春における早過ぎる訃報を受けた際にも、改めて作品たちを読みたくなっていたのであった。

 

とはいうものの、なかなか手に取るタイミングを逸していた中で、図書館でたまたま目にしたことにより気持ちが蘇り、そのまま棚にあった2冊を借りて帰ったのであった。

 

やはり私好みの、古き良き時代の芳香を放つ、素晴らしい文学小説であった。憂いを帯びた男が醸しだす哀愁というのにとにかく弱い私。なんとも情けないその姿に心掴まれ、食い入るようにしてページを巡った。

 

著者の実話をほぼそのままに投影した、いわゆるクズと言われるような男の、なんとも自分本位で自堕落な日常を描いただけの小説(私小説)なのだが、それがなかなかどうして、抜群に面白いのである。

 

著者を信じて、まとめて2冊借りておいてよかった。この作品を読み、彼の残した作品を全部読むことにしようと心に決めた。しばらくハマってしまいそうだ。