いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

歪んだ忌日

西村賢太の『歪んだ忌日』を読了した。

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西村作品を読むのはこれで三作目となる。本作も私小説なので、前作までと同様に、作者のどうしようもなく荒ぶれた過日を辿ることとなる。

 

本作では、異なる年代の作者の生活が切り取られる。ただ、主人公自体の成長がなく、思考や性格にも変化がないため、まるで同じ時期のことのようにさえ読めてしまう。

 

いつになっても女性蔑視が甚だしい。ゆえに本人がとことん落ちぶれ、惨めで、幸福とは程遠い生活を送っているわけなのだが、それでも女性の方が読んでいて気持ちの良い内容ではないと思われる。

 

ただそんな自分とは対極にある人物の物語ゆえにか、どんな惨めな顛末を迎えるのかという、意地の悪い、恐いもの見たさの感情が抑えきれない。つまりは読んでいる私も、本質的には彼と通ずる汚らしさを心底に隠し持っているのであろう。

 

それでも、もはや乗り掛かった舟、読みかかった私小説なので、途中で投げ出すのも気持ちが悪い。来年も引き続き、彼が歩むであろう修羅の道を見届けたい。