いつかこの日々を思い出してきっと泣いてしまう

文学パパが綴るかけがえのない日常

雑記

傲慢と善良

辻村深月の『傲慢と善良』を読了した。 図書館から本の確保ができたと通知が来たので借りに行った。予約したのは何ヶ月も前だ。はて、私はなぜこの本を予約したんだっけ?読み始める前は正直そんなことを思ってしまった。 本に疎い妻でさえ知っている話題作…

芝公園六角堂跡

西村賢太の『芝公園六角堂跡』を読了した。 いつも通り、著者の経験を下敷きに書かれた連作の私小説ではある。が、この本に並べられている短編たちは、少しばかりこれまで読んだものたちと異なる質を帯びていた。 切り取られている時代は現代に近く、芥川賞…

蠕動で渉れ、汚泥の川を

西村賢太の『蠕動で渉れ、汚泥の川を』を読了した。 ふたたび西村作品に戻ってきた。改めて他作者の手掛けた美文調の作品を読んでからここに戻ってくると、彼の作品の魅力が理解できる。 実に映像性に富んだ文章なのだ。文章を辿ると遅延なしに映像が浮かん…

無垢の博物館

オルハン・パムクの『無垢の博物館』を読了した。ここ最近、西村賢太の私小説ばかりを読んでいたので、いったん感覚をフラットに戻すためにも長篇の海外小説を読んでみたくなったのだ。 西村の書くモノトーンな文章(それが氏の文章の魅力である)と比べると…

痴者の食卓

西村賢太の『痴者の食卓』を読了した。引き続き西村作品を出版順に読んでいる。相変わらずタイトルに独特の味わいがあるなと感じる。 本作も私小説の連作短篇であったので、これまで読んだ時点からの続きを期待して読んだのだが、時系列がやや戻り、元恋人と…

無銭横町

西村賢太の『無銭横町』を読了した。引き続き西村作品巡りは続いている。出版順に単行本を読み進めており、今回は2015年出版作品。今作も私小説で、著者の分身である北町貫多を主人公とした連作短篇集である。 前作から時系列が続く物語も読め、ひとつひとつ…

THE FIRST SLAM DUNK

映画館で『THE FIRST SLAM DUNK』を観てきた。 前評判に違わない大きな感動が得られた。久々の映画館での映画鑑賞であったが、この作品を劇場で観られたことを幸運に思えた。 すべての映画が、本来であれば映画館で観ることがベストであるのだろう。ただその…

やまいだれの歌

西村賢太の『やまいだれの歌』を読了した。 昨年の締めに続いて、今年の読み初めも西村賢太の作品であった。まだまだ彼の作品読破へと向けた道半ばにあるゆえ、しばらくはこれが続くものと思われる。 さて、本作は彼の初となる長編作品である。著者の経験に…

歪んだ忌日

西村賢太の『歪んだ忌日』を読了した。 西村作品を読むのはこれで三作目となる。本作も私小説なので、前作までと同様に、作者のどうしようもなく荒ぶれた過日を辿ることとなる。 本作では、異なる年代の作者の生活が切り取られる。ただ、主人公自体の成長が…

読了ビジネス書リスト(2022.4Q)

今年が終わる。早いものだ。 この4半期はプロジェクトとプロジェクトの狭間期間もあり、ビジネス書を読む時間も比較的確保できた。 プロジェクトに関連する書籍や、図書館に入館された新作図書を中心に、目についたものを読んでいった。 そんなわけで、2022…

自転しながら公転する

山本文緒の『自転しながら公転する』を読了。 本作が著者の遺作だという記事を目にしてこの本のことを知った。彼女の作品は読んだことはなかったが、この美しい装丁に目を奪われ、きっと内容も素晴らしいのだろうという期待感を持った。 図書館で予約するこ…

棺に跨がる

西村賢太の『棺に跨がる』を読了した。 先に読んだ『寒灯』に続く作品。出版社は異なるのだが、前作からの続きとして読むことができる。 著者の投影である主人公、貫多と恋人の秋恵との破局直前の日々を描いた短編集。前作から、貫多の行き過ぎた言動をヒヤ…

寒灯

西村賢太の『寒灯』を読了した。 苦役列車の映画を観て以来、心惹かれていた作者である。今年の春における早過ぎる訃報を受けた際にも、改めて作品たちを読みたくなっていたのであった。 とはいうものの、なかなか手に取るタイミングを逸していた中で、図書…

いるいないみらい

窪美澄の「いるいないみらい」を読了した。 少し前に文庫化されたのも知っていたが、図書館の棚で見かけたので借りて読むことにした。窪美澄は女性作家の中では数少ないお気に入りの作家だ。 タイトルや帯から想像していたとおり、子供を産む、産まないで悩…

ハゴロモ

よしもとばななの『ハゴロモ』を読了した。 図書館でもう一冊小説が借りたくなって、その場で棚から選んで借りた本だ。そういうときには、信頼を寄せている作者の作品にかぎる。 それにしてもこの小説は素敵だった。悲しみに包まれた主人公が田舎に帰り、少…

私は女になりたい

窪美澄の『私は女になりたい』を読了した。 最近、中高年の恋愛小説に惹かれるようになった。恋愛というよりは、その年齢における女性の気持ちに興味があるのだと思われる。 このような小説の題材となる男女は、たいていがうまくいっていない。年齢を重ねる…

図書館奇譚

村上春樹の『図書館奇譚』を読了した。 イラストが添えられた海外からの逆輸入となるアートブックシリーズ第三弾だ。これまでと同様、図書館で借りて読んだ。 村上春樹の軽やかな文章は、読むときを選ばない。いつ読んでも読書の楽しさを味わえるから重宝す…

涅槃

垣根涼介の『涅槃』上下巻を読了した。 かつてはエンタメ小説で名のある賞を総なめしていた垣根涼介が歴史小説家に転身して幾ばくか。私はこれまでその全ての作品を読んできた。 最新作となる本作も、やはり面白く私好みであった。宇喜多直家という、大河ド…

パン屋を襲う

村上春樹の『パン屋を襲う』を読了した。 これまたお洒落な挿画が入った贅沢本である。コレクターではないので図書館で借りて読む。ビジネス書を読む合間、お菓子をつまむように読み進めた。 おそらくはオリジナル版は大学生の頃に読んだと思う。そのころは…

オードリーとオールナイトニッポン

『オードリーとオールナイトニッポン』の『自分磨き編』と『最高にトゥースな武道館編』を読了した。 図書館でオンライン検索でたまたま見つけたので借りて読んでみた。現在、私は彼らのラジオを毎週欠かさずに聴いている。 しかしながら、この雑誌が出版さ…

恥辱

J・K・クッツェーの『恥辱』を読了した。 ノーベル賞作家だというが、著者の作品は初めて読む。史上初、ブッカー賞を二度受賞した作品というのに興味を惹かれたのと、信頼のハヤカワepi文庫だったので図書館で借りて読むことにした。 初老の男の転落劇を描い…

内面からの報告書

ポール・オースターの『内面からの報告書』読了。 オースターの小説は好きだが、やはりエッセイは(一部を除き)そこまで好みには 合わない。本作も図書館で借りて読んだが、単行本で買わなくてよかったと思ってしまった。 もちろん文章自体は好みなので、読…

ドライブ・マイ・カー

昨夜、妻と一緒に鑑賞した。 冒頭からまったく無駄なシーンが無く惹き込まれる。序盤が終わり、オープニングが流れる頃には、これは信頼が寄せられる映画だと確信が得られていた。 とにかくどのカメラアングルもカッコ良いのだ。自分が住み慣れた日本の風景…

赤い髪の女

オルハン・パムクの『赤い髪の女』を読了。 ノーベル文学賞作家だが、彼の作品は初めて読む。愛読する本猿さんのブログで興味を持った作家だ。上下巻ものが多い中で、比較的短い本作を選んだ。まずは自分の趣味に合うか、確かめてみたかったからだ。 結論か…

読了ビジネス書リスト(2022.3Q)

四半期が過ぎるのはなんと早いものか。 プロジェクトへの関与が始まったことで、ぐんと本を読む時間が減ったが、それでも引き続き、自己研鑽の時間はできるだけ確保している。 そんなわけで、2022年7月から9月で読んだ書籍は以下である。★を付けたのが良書だ…

冬の日誌

ポール・オースターの『冬の日誌』を読了した。 彼の自伝的エッセイである。人生における冬の季節に差し掛かった今、改めて自身の生い立ちを振り返っている。こちらは肉体に纏わる回想録で、姉妹本の『内面からの報告書』は精神起点での自叙伝となっているよ…

スクイズ・プレー

ポール・ベンジャミン『スクイズ・プレー』を読了。はっきり言って見逃していた。愛読する本猿さんのブログでご紹介頂かなければきっと気づくことができなかったであろう。感謝するばかりだ。そして本好きの有益なネットワークを有する悦びを再確認できた。 …

ある作家の夕刻

フィッツジェラルドの『ある作家の夕刻』を読了。 こちらも今回は図書館で。村上春樹翻訳ライブラリー形態がリリースしたら、改めて購読する予定だ。 フィッツジェラルドの晩年の作品(短編小説とエッセイ)が収められている。どれも味わい深かったが、中で…

最後の大君

フィッツジェラルドの『最後の大君』を読了した。 こちらも図書館で借りて読んだ。村上春樹の訳すフィッツジェラルドの作品は、全て『村上春樹翻訳ライブラリー』シリーズで集めているので、その版が出たら改めて購入したい。 未完の作品というので期待せず…

小説の読み方

平野啓一郎の『小説の読み方』を読了した。 こちらは文庫本を買って読んだ。前作のときは気になったものの読むまでには至らなかったが、今回はポールオースターや伊坂幸太郎など、既読小説の読み方についても収録されていたので手に取った。 どれも作家なら…